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ブランドとは何か? その2 あるべき姿の共有方法

前回の記事「ロゴとブランドの関係」で、「ロゴはブランドについてのさまざまな連想を引き出すうえで、とても有効な道具」と書きました。ロゴを見ると、人はそのブランドについてのさまざまな連想を呼び起こします。

ブランドとは何か? その2 あるべき姿の共有方法

ロゴに限らず、名前、製品、パッケージ、広告など、強いブランドにふれたとき、人はさまざまな連想を呼び起こします。そして、呼び起こされた連想が強く、好ましいほど、そのブランドが選ばれる確率は高くなります。言い換えれば、強いブランド力とは強い連想を呼び起こす力と言えるでしょう。

では、強い連想を呼び起こすにはどうするとよいでしょう?

それにはまず、さまざまな部門の間で、ブランドのあるべき姿を共有することが大切です。ブランドのあるべき姿を目指して各部門の活動の方向を合わせていくことで、人が呼び起こす連想の強度は高まり、ブランドの印象は強くなっていきます。

ブランドのあるべき姿

強いブランドではあるべき姿が共有されている

実際、世の中の強いブランドでは各部門、各スタッフがブランドのあるべき姿をよく理解していて、それに合わせた行動をとっています。

ブランドとは何か? その2 あるべき姿の共有方法

たとえば、スターバックスの場合、どのお店に行っても共通の居心地を感じることができます。店舗のデザインは実はショップによってだいぶ異なるのですが、どのお店からも共通のセンスや雰囲気が感じられます。また、気さくな挨拶からちょっとした言葉遣いまで、アルバイト・スタッフもスターバックスらしさをよく理解し、行動に移しています(むしろ、彼ら自身がスターバックスのファンなのかもしれません)。スターバックスの独特の居心地はそういうところからも生まれていて、だからこそ、知らない街に行ったときも多くの人がスターバックスを選びたくなるわけです。

あるいは、無印良品の店舗や商品、スタッフの姿、さまざまなプロモーションなどを思い浮かべてみてください。自然体、シンプル、明瞭さ、という無印良品らしさを貫いていることがわかると思います。全部門での施策を徹底して統一しているため、「無印良品」という文字を見るだけで、人は共通のイメージを思い起こします。

あるべき姿の共有方法 その1 アクシス・ブランドパレット

では、どのようにしてブランドのあるべき姿を各部門やスタッフの間で共有するか、ですが、アクシスでは、アクシス・ブランドパレットというフレームワークをよく用います。

アクシス・ブランドパレットの例

ご覧のように、ブランドに関わる6つの要素を円状に配置したものです。この6つの要素のひとつひとつを考えていくことで、ブランドの提供価値を明確化できるようになっています。

下記は、架空のマンション・ブランドについて仮につくってみたアクシス・ブランドパレットです。

アクシス・ブランドパレットの例

ご覧のように、ブランドの提供価値を一枚で表し、把握できるようになっています。

実現したいことを示すブランドビジョン

この架空のマンション・ブランドを例にして、アクシス・ブランドパレットの各項目を説明していきましょう。

ブランドビジョン

最初に来るのは、ブランドにとって最も大切な項目、ブランドビジョンです。そのブランドが人や社会に対して何を実現したいのかを明文化したもの。お客さんや世の中から言えば、「このブランドは自分(たち)に何をしてくれるのか」を意味します。

たとえば、スターバックスのブランドビジョンなら、家でも職場でもない第三の場所の提供。無印良品なら、「感じ良いくらし」の実現。いずれも独自性のあるビジョンです。例にしたマンション・ブランドの場合、ブランドビジョンは「味わい深いマンション生活の実現」。「味わい深い」というところが独特なものになっています。

コアターゲットと独自の特徴

コアターゲット

2つめはコアターゲット。そのブランドが中心に据える顧客像です。例では「30代の夫婦。子供なしか、5才以下の子供」をコアターゲットに設定しています。

この例のようにマーケットセグメント的な規定をする場合もあれば、理想的なユーザー像(例えば、広告に展開するような、ある種の憧れを体現したユーザー像)を設定する場合もあります。どちらにするかはブランドの置かれている状況や、スタッフにとっての理解しやすさ・納得感によって変わってきます。

独自の特徴

独自の特徴は、ブランドの商品・サービス・技術などの具体的な特徴です。例では、「ニューヨークのトレンドに基づくデザイン提案(のあるマンション)」「デジタル化された営業スタイル」としています。あまり多くを羅列しないで、「お客さんに最も強く伝わる訴求ポイントは何か」という視点で絞り込むのがコツです。他ブランドとのちょっとした差別化ではなく、大きな違いや強い独自性を設定できればベストです。

機能的価値と情緒的価値

独自の特徴では客観的に見た価値を挙げますが、機能的価値と情緒的価値ではお客さん側の視点に立ちます。

機能的価値

機能的価値はお客さんがそのブランドから得る実際的、機能的なベネフィット。噛みくだいて言うと、お客さんがどんな実利が得られるか、です。例では、「空間の自由度の高さ」「合理的な価格体系」「簡便な入退居」と設定しています。

情緒的価値

機能的価値が実利であるのに対し、情緒的価値はお客さんにとっての感覚的なベネフィットです。例では、「ナチュラル」「活気のある」「自由な」としました。そのブランドにふれたとき、どんな感覚が得られるようにするか。刺激的なイメージなのか、優しいイメージなのか、楽しいイメージなのか・・・情緒的価値に合わせて、製品のスタイリング、パッケージ、空間、広告のトーンなどをつくり込んでいきます。そうすることで、ブランドにふれた人が覚える情緒や感覚が変化するわけです。

ブランドの人となりを表すブランドパーソナリティ

ブランドパーソナリティ

最後はブランドパーソナリティ。そのブランドを人にたとえるとどんな人か、です。

前回も書きましたが、ブランドと人間は似ています。人間に性格や行動パターンがあるように、ブランドにも性格や行動パターンがあります。そして、ある人の人となりを好きになったり嫌いになったりするように、ブランドの人となりも好かれたり嫌われたりします。

ブランドにも人となりがあるブランドにも人となりがある。人となりしだいでブランドが好かれたり嫌われたりする。


例ではブランドパーソナリティを「専門家」「話題豊富」「親切」としました。たとえば、専門家ならどんな見せ方をするだろう、と考えてWebをつくる。話題豊富な人ならどんな話を盛り込むべきだろう、と考えてパンフレットをつくる。親切な人ならどんなふうに接するだろう、と考えてショールームや接客スタイルをかたちにする。そういう作業を積み重ねていくことで、そのブランドならではの人となりが感じられるようになるわけです。

提供価値の明確化と共有が大切

アクシス・ブランドパレットの各項目をもう一度、まとめます。

アクシス・ブランドパレットのまとめ

アクシス・ブランドパレットの便利なところは、ブランドの提供価値を考えるツールであるとともに、スタッフの間で提供価値を共有するツールでもあることです。

ブランディングの分野では、他にもブランドの提供価値を整理するフレームワークがありますが、アクシス・ブランドパレットはなるべくシンプルにまとめられるように工夫してあります。使うときもメンバーが一目で見渡せるよう、簡潔な言葉で語ることがコツです。

構想だけではブランドは育たない

最後に、ここまでをまとめましょう。

・強いブランドでは、ブランドのあるべき姿が部門間でよく共有されている
・ブランドの提供価値は、構想とともに共有しやすさも大切
・一目で見渡せるフレームワークで整理すると、明確化・共有しやすくなる

ブランドについての構想はあくまでスタート地点。強いブランドをつくるには、提供価値を各部門やスタッフの間で共有し、さまざまな活動を通じてそのブランドらしさを人々に感じてもらう運用のフェーズが非常に重要です。その点で、共通のフレームワークでブランドの提供価値を整理するやり方はとても有効です。

ブランドづくりに迷いが出たら、まずはあるべき姿をもう一度見直してみてください。そして、どうやったら全員で共有できるかを考えてみてください。そこからいろいろなことが始まります。

(ソリューション第1グループ 稲本喜則)