AXIS design

Thinkings

2025.09.01

AXIS CAPABILITY BOOK 01-2
Case Study _ ミュージアムタワー京橋 <前編>

旧ブリヂストンビルの建て替え事業として、2019年7月に竣工したミュージアムタワー京橋(事業主:株式会社永坂産業、公益財団法人石橋財団)。その竣工から5年を経た2024年11月1日、「WORK with ART」をコンセプトに、「アート」の力で「働く」ことに豊かな価値を与えるオフィスビルとして新たなステージに入った。

AXISでは、「WORK with ART」というコンセプトの立案からアートの実装、さらに今後の展開までを見据えたプロジェクトを推進した。その具体的なワークフローを紹介していく。

ミュージアムタワー京橋(竣工当時)

 

SOCIAL ISSUES ― 社会課題を捉え未来を構想する ―

近年、東京都・八重洲〜京橋エリアにかけ、都市再生特別地区指定に基づく大規模再開発が進行している。街区ごとに超高層のオフィスビルや複合施設の竣工が相次ぎ、供給されるオフィス床の総面積も増加しつつある。一方で、オフィス床の過剰供給と空室率の増加は社会的な課題でもある。2020年春以降の新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、オフィスワークを取り巻く環境は大きく変化し、主にテレワークが普及したことにより、各企業において働く場所と働き方のありようが見直され始めた。東京23区内のオフィス床の空室率は2020年第1四半期では1%に満たなかったものが、以降、急激に増加している。

ミュージアムタワー京橋が取り組む「WORK with ART」プロジェクトは、こうした社会の変化と未来に対するオフィスビルとしての一つの回答とすべくスタートした。

 

CONCEPT ― 徹底的なリサーチ力から生み出されるコンセプト ―

「WORK with ART」というコンセプトは、ミユージアムタワー京橋の独自性や京橋という街の個性とこれからのまちづくりを見定め、ワーキングプレイスおよびここで働く人々のニーズ、社会的動向の変化などに関するリサーチのなかから生まれた。これからのビジネスは、効率性を追求する「労働生産性」ではなく、新たな価値を生みだす「創造生産性」*が求められるとの仮説を立て、多面的な調査を実施。そのうえで、ミュージアムタワー京橋というオフィスビル単体の価値向上に止まらず、未来のオフィスビルのスタンダードとなることを見据えたリーディングプロジェクトと位置付け、新たな働き方の価値を杜会に提示していくことを目指した。
*コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」の商標

 

RESEARCH ― 各分野の専門家の知見をもとに焦点を絞る ―

コンセプトの「五感を刺激する体験により、創造的な働き方を促進する」に関し、各分野の第一人者らに意見をうかがい、基本方針や施策の方向性をブラッシュアップしていった。ArtとWork、これらをより高次元で融合させていくための研究や活動を展開する有識者らに「アートは創造性を裔められるのか?」といった課題を投げかけ、オフィスビルとして提供できる価値を検討・分析。そのうえで「個人集中」「気分転換・回復」「つながり・ 創発」という三つ のテーマを導き出した。さらに、 これらのテーマを具現化するため のアプローチ方法を検討するために、テーマに則った有識者への追加ヒアリングも実施。 この結果、ArtとWorkをつなぐ領域に「Science & Technology」を見出した。「論理・検証」による科学的裏付けを掛け合わせることで「創造生産性」という、新たな価値の創出を試みる体制を構築した。

 

IDEATION ― アイデアを空間に落とし込む ―

ヒアリング内容をもとに導き出したテーマを、ミュージアムタワー京橋の空間で実装するために、 具体的な空間イメージを描き、アイディエーションを行った。プロジェクトの第1弾としてアートを実装する場として、ビジネスパーソンが日々利用する共有スペースのうち、「1階エントランスロビー」「1階~3階エスカレーター」「3階オフィス ラウンジ」を選定。屋外に向けて開放感あるガラスファサードをもつ1階エントランスロビーを「参加型アートギャラリー&カフェ」と想定し「つながり・創発」の場に。1階~3階エスカレーター は「モードスイッチを促す〈アートコリドー〉」として「気分転換・回復」の場に。3階オフィス ラウンジは、「リラックスした環境で集中できる〈オープンオフィス〉」と位置付け「気分転換・回復」および 「個人集中」の場とすることを提案。初期仮説として構築した各フロアに対するアイディエーションをブラッシュアップし、施策を具体化していった。

 

CREATIVITY ― 「創造力を呼び覚ます」アートをオリジナル制作 ―

1階~3階までの三つの空間に、それぞれ「視野の解放」「気分の変容」「心身の整調」というテーマを設定。有識者へのヒアリングや、併設されるアーティゾン美術館との連携、さらに、AXISが発行するデザイン誌『AXIS』に蓄積されたアートやデザインに関する知見も合わせ、アーティストを選定した。これら三つの空間に実装されたアートは、いずれも「五感を刺激する体験により、創造的な慟き方を促進する」ことに即した「五感アート」と位置付けられた。各アーティストとAXISのコラボレーションにより、唯一無二のアート空間が誕生している。

〈WORKS〉
AXIS CAPABILITY BOOK 01 [case study] ミュージアムタワー京橋
https://design.axisinc.co.jp/works/1518/

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